難しい科学や普段馴染みのない物理の法則を、とてつもなく大きな仕掛けで解り易く目で見て理解ができる。

大科学実験 discover science

『大科学実験』とは……

オープニング。ナレーションは細野晴臣。淡々と言う。決まり文句だ。「誰もが当たり前だと思っている自然の法則や科学の知識。でもそれは本当なのでしょうか? 答えはやってみなくちゃわからない。大科学実験で……」。そして実験が行われる。それがめったやたらと大規模で、でも見るものにやさしく説明をしてくれたりはしなくて……。何とも不思議な番組だ。そう言うと、森美樹チーフ・プロデューサーは「ありがとうございます」とニンマリ笑うのだった。


——そもそもどういう経緯で生まれたんでしょうか? クレジットにはNHK、NHKエデュケーショナル、アル・ジャジーラ子どもチャンネル3者共同制作となっていますが

NHKエデュケーショナルがアル・ジャジーラ子どもチャンネルに提案して制作している、という関係ですね。アル・ジャジーラ子どもチャンネルというのは、アル・ジャジーラネットワークという中東のNHKのような放送網があるんですが、その中に5年ほど前に立ち上がった若い局です。本部はカタールのドーハ。今、カタールでは国を挙げて教育に力を入れているんです。王様も王妃も、「今後世界を成り立たせていくのは教育だ」という意識が強くて。天然ガスマネーを背景にかなり教育に力を入れているんです。去年は、大規模な世界的教育サミットを開催して、ドイツのシュレーダー元首相や国連広報局長の赤坂さんとかものすごいVIPを招待していました。「自分たちが世界の教育のハブになるんだ!」といわんばかりの勢いですね。で、これまでNHKエデュケーショナルはアル・ジャジーラ子どもチャンネルに番組を販売していたんですが、その過程で、つねづね先方の理事長と私たちの役員との間で「いつかは、世界に認められるようなコンテンツを共同制作したいね」みたいな話をしていたんです。

——それが実現した、と。

ええ、一昨年の夏、NHKエデュケーショナルが番組の企画を出しました。コンセプトはふたつありました。まず“大規模である”ということ。「お、そんなすごいことやるんだったら見てみたいなぁ」って誰もが思うようなものですね。それと“CGは使わない”ということ。今どきCGは当たり前です。科学の説明をするにもキレイでわかりやすいし。でも、テレビが歴史の中でグラフィックを追求してきた結果、 実際にその場で起きていることをきちんと撮るという文化が薄れてきたのではないかという思いが私たちの中にもあって。つまり「大規模な実験でCGを使わずに子どもたちに見せる」という。そういうコンセプトと共に、科学に対する子どもたちの興味を引き出すものとして、7つの実験を考えて、アル・ジャジーラさんに提案をしたら、喜んでもらえたんです。彼らはNHKの理科教育番組を非常にリスペクトしてくれていたんですが、一点だけ「まじめすぎてエンターテインメント性がない。子どもたちが楽しんでみられる科学番組にしてほしい」と。そして「せっかくだから7本だけじゃなくって、1年分の52本にしてほしい」と。後者については、とても制作が追いつかないので、半分の26本分の実験を考えることになったんです。

——森さんの子どものときの夢を実現したわけではなかったんですね。

はい、違います(笑)。日本の科学番組って、民放さんのも含めてなんか弾けきれないところがあるなあと思っていたんです。エンタテインメント性はあるかもしれません。でも実験をマジックみたいに見せちゃって、科学の視点が抜けている気がするんです。逆にNHKの理科教育番組みたいに科学の要素を見せようとすると、エンタテインメント性が抜けちゃう。見ていてすごく楽しくて、でも、その中にきちんと科学の真理がある番組にしたいなと思っていました。

——こういった大規模な実験って、毎回ごとに考え続けることは大変じゃないですか?

大規模だから大変っていうことはないんです。アル・ジャジーラからの要望で、結局1カ月の期限で26本を制作することになったんですが、いろんな理科関係の専門家の方からアイデアを募り——あ、私も考えましたよ!——アイデアは140ぐらい集まりました。でもね、科学を知っている人が考えると、すごく真面目な実験になっちゃうんですよね。「いかに大きくするか」よりも「いかに  エンタテインメ音の速さを見てみようント性を持たせるか」を考える方が大変でした。「大きい」っていうのは、ときに「大きい」っていうだけで面白かったりしますから。たとえば『音の速さを見てみよう』(※1)の場合、1.7㎞に86人並べる必要はないんです。その規模でやるところにバカバカしい面白さがある。でも、この面白さを周囲にわかってもらえないんですね。NHKの番組制作って結構ロジックで詰めていくので「なんで1.7㎞なの?」「この実験なら100mでできるでしょ?」って指摘されちゃうんですね。そういうロジックと「1.7 ㎞だから面白い」というエンタテインメント性のところのせめぎ合いはありましたね。

——ちなみに森さんが、今まで制作してきたものはどうような番組ですか?

理科の教育番組、小学生、高校生向けの教育番組。福祉番組とかですね。ドキュメンタリー系の番組が多いかな。でも福祉の番組を制作するにしても、あまりマジメマジメしたのは好きじゃなくて。どこかちょっとしたジョークを交える方が好き。真面目な番組もいいんですけど(笑)。

——毎日のように実験について考えていますか?

最近はそうですね。まぁでも……私は好き勝手言っていればいいので。「人間、1.7㎞分並べてよ~」とか(笑)。

——でも実際には、本番収録での実験に向けて、準備のための予備実験はかなりするわけですよね?

やってますねえ。予備実験は、スゴイです。死にものぐるいでやってます。

——その予備実験には、どのくらいの時間をかけるんですか? 

コップで力士を吊す実験(※2)は、4カ月ぐらいですね。ワイングラスみたいな形状のコップって、たいてい柄と上のカップ部分をくっつけてあるんですよね。そこが一体成形されているのは高いんです(笑)。しかもなかなか売っていない。くっつけてあるということは、ある程度の重さがかかればそこが取れるということです。そんなことも全部予備実験をしないとわからないんですよね。で、そこから、どのメーカーのどういうコップがいいのか。コップを吊すロープの強度は、ロープを引っ掛けるアクリルのバーの強度は……って、1個1個パーツを全部調べて。その都度、人間を吊してみるわけですからね。

——4カ月とは途方もないですね……

「空飛ぶクジラ」(※2)では8カ月ぐらいかかっていますよ。人間を持ちあげるわけですから、そこは慎重に。収録にも時間がかかりましたね。このときはまず長さ25mのクジラで撮影しました。本番は50mの予定だったんですけど、成功する保証はありません。最悪25m版の映像を使え空飛ぶクジラばいいかと。これで1日かかりました。巨大なソーラーバルーンを上げる実験って、微妙な条件が全部整わないと成功しないんです。風速が1mを超えるとバルーンは飛んでいっちゃうし、雨が降ると本体が重くなっちゃう。もちろん太陽が出ないと中に入れた空気が暖まらないし。25m版ではそれを1日で成功して、番組スタッフは自信を付けちゃったんですね。50m版は、まずバルーンを作るのに体育館を借りて3日。実験前日に朝霧高原に運んだんですが、雨で順延。結局3日目にようやく晴れて実験ができたので……収録にかかったのは全部で8日ぐらいですね。

——あの実験で宙に舞ったのって、森さんらしいですね。

アレはなかなかでしたよ(笑)。

※1: 1.7kmに86人が並び、音を聞いたら旗を上げる。音の速さを視覚化する実験
※2: ポリ袋&ガムテープ製、長さ50mのソーラーバルーンで人を持ち上げる実験



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番組data
番組名 大科学実験 discover science ジャンル その他
放送局 日本放送協会、アル・ジャジーラ子どもチャンネル(国際共同制作)
放送日時 毎週水曜 午後7時40分から7時50分
毎週金曜 午前10時45分から10時55分
番組URL  http://www.nhk.or.jp/daijikken/
           http://www.daikagaku.jp/ 
主なスタッフ 実験監修・NPO法人ガリレオ工房(瀧川洋二理事長)(敬称略)
総合演出 寺嶋章之(ビヨゴンピクチャーズ)
スタッフ数  16名(実験により100名ほどにもなる)
主な出演者 ナレーション・細野晴臣(敬称略)
放送開始日 2010年4月

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