普段から目にしている何気ない小路に発見がある。

ブラタモリ

『ブラタモリ』とは…… NHK総合テレビの新番組発掘プロジェクト“番組たまご”から誕生。09年10月からシリーズ化。タモリがさまざまな“先生”とともに街をぶらつき、地形に残された過去の痕跡にちまちま突っ込んだり驚喜したり。アドリブ感覚満点ながら、ロケでタモリが接触した部分には適切な捕捉説明やCGを入れてくれる。無軌道な熟年の街散歩番組。第1シリーズは15回で終了。2010年10月7日より第2シリーズ放送開始

『ウォッチング』以来19年ぶりのNHKレギュラーらしい。異能のテレビタレント、タモリを擁した街歩き番組である。タモリありきで生まれたのか、はたまたNHKの企画にタモリがうまくフィットしたのか。“タモリ司会(?)の新番組”自体、レアなのだ。なぜいま、そしていかにしてこの番組は生まれたのだろうか。 


——NHKらしからぬ、しかも深夜っぽい空気感の番組ですけど、いかにして生まれたんでしょうか?

「番組開発」という、新しい番組をつくる部署がありまして。ここでは、たくさんのディレクターが日々新しい企画を提案しているわけです。この番組の原型はそこから出てきたんです。三億円事件とか昔あった出来事の足跡を現代の街の中に見出して追いかけるという、歴史と社会派をミックスしたようなコンセプトで。提案自体は最初から「ぜひタモリさんでやってみたい」ということで考えていました。それでタモリさんの事務所に話をしに行くと、興味は持っていただけたんですが、「事件だけでなく、もう少しニュートラルな目線で、街に残る古いものを見るような形ではどうだろう」という方向に話が進んでいきました。 


——NHKさん側から投げかけ、タモリさんの事務所からの打ち返しもあって、キャッチボールのように……。

はい、私達もタモリさんは日本坂道学会の副会長で、坂道の本を出してらっしゃるということを聞いていて、通常の余暇でもお好きで街歩きをよくしてらっしゃるという話もわかってきたので、より“そっち”に寄り添った形で、かつ新しいものができないかと詰め直したんです。タモリさんサイドにはおそらくいつもいろいろな提案が持ち込まれているはずです。そんななかで「わざわざタモリさんが新たにやる」には、きちんと意義のあるものでないと、日程も内容的なご了解もいただけない。それでわれわれも企画を練り直して、意気込みを持って最初の原宿編を持っていったんですね。当初はシリーズにするという具体的な話をしていたわけではなく、「まず1本」ということでお願いしました。 


——たくさんの提案のなか、タモリさんとしても「これなら」ということで選ばれたんでしょうね。


そうだと思います。でも、タモリさんに認めてもらえばいいというわけじゃないんです。『番組たまご』でオンエアされるには、局内コンペを勝ち抜かねばなりません。NHK内部のさまざまな部署に、たとえば「夜10時台の新番組を求めます」という募集がかけられるわけですが、そこで出される企画がいかに新しく、その時間帯にフィットしていて制作するに足るかということが認められないと、枠と予算がもらえないわけです。だから、タモリさんとNHKの両方を納得させる企画を並行して作ってきたわけですね。 
  

——タモリさんは、ある種街歩きオタクみたいなところがあると思うんですが、制作者側も同じようなマインドを持たないと発想できませんよね。

僕はもともとそっちの方が好きだったんですよ。衛星放送の部署に長い間いたもので(笑)。衛星放送というところは、どちらかというとちょっとコアな視聴者向けのものを開発する部署なんです。『BSマンガ夜話』『BSアニメ夜話』『迷宮美術館』などという番組を担当しながら、『熱中時間』という趣味の番組を立ち上げたりしてきました。マニアックな世界の面白さをどう見せるかということをやり続けてきたんです。なので、むしろマニアックになりすぎないように調整するぐらいの感じ。それに、いまや「多少マニアックなことが一般的」になってきている気がするんです。衛星放送時代にアニメやアキバを取り上げても、特殊なこととしてではなく日本文化の一部として捉えられている風潮はありましたし。そういう「マニアック」なものをあえて夜の10時台に持ってくることが、意義だったのかなと思っています。 


——タモリさんというマニアックな方がいて、さらに尾関さんの視点と、世間の風潮がうまく重なったわけですね。

それだけじゃなく、歴史に強い人間もいてベースはしっかりと押さえているところが大切なんだと思います。これまでNHKは王道的な歴史番組を数多く作ってきました。そこにはすごいリサーチャーがいて、尋常じゃないほどきちんとしたリサーチをするわけです。そこにオタク的な味付けをすることができた。つまりチームとしてバランスがいいんじゃないでしょうか。 


——時代考証的をきちんと踏まえたのが強みだとは思うんですが、それに寄りすぎるといわゆる「歴史番組」になってしまいますよね。エンターテインメント性との両立は大変じゃないですか。

【写真 新宿0806/図面をみる】 「お勉強にならないようにしよう」っていうのは全スタッフ意識していたんです。NHKの強みでもあるきちんとしたリサーチや考証をベースにおいて、そのうえで軽く楽しく見てもらうにはどうしたらいいかっていうところは考えました……が、そこはタモリさんが出てくださるんだから、お任せしようと。タモリさんが独自の発想やトークでかみ砕いて面白くしてくれるところを、きちんと追って撮っていけばそれでいいんじゃないかと。下手にこちら側の演出で何かをするよりも、「せっかくタモリさんなんだから面白さを活かそうよ!」っていうことで。僕たちはしっかり調べた街の背景と、「ここが面白い」っていう見どころを用意しましょうと。そこにタモリさんがきちんと乗ってもらえれば、それで十分面白くなる。お勉強にも寄り過ぎないだろうという確信はありました。


——タモリさんの力に頼ると・・・。

ええ、全面的に頼っていいと思っています。タモリさんが出てくださるっていうことは、大きな力を手にしたことになる。全開で活かしていかなくては。タモリさんっていろいろな番組に出ていらっしゃいますけど、ご自身が前に出てしゃべっているケースって実はあんまりないんですよね。誰かが前に出ているのを後ろから突っ込んだり、そこでできている流れから外れて勝手に動いたりされてることが多い。この番組では自分でしゃべっていただこうと思ったんです。“タモリさんがしゃべる時間が一番長い、タモリさんの番組”という位置づけですね(笑)。他のタレントさんを組み合わせていないのも、ご本人がしゃべらなくてはいけない状況にしたかった、という理由もあります。 


——共演の久保田アナウンサーも、そういう観点でキャスティングされたんですね! 

そうです。通常NHKのこういう番組ですと、アナウンサーが下調べをして番組全体をリードするんですよ。でもそれだとまさに“通常のNHKの番組”になります。だから久保田アナウンサーを起用しました。彼女は東京の女性アナウンサーの中でも一番の若手だったんです。しかも彼女には「予習してこないでそのまま出てほしい」と。「年齢なりの女性として素直なリアクションをしてくれればいい」と、現場に放り込みました(笑)。


——久保田アナのリアクションだけでなく、ライブ感は強いですよね。第1シリーズにあった、近所の人に話しかけられたり、「結婚相手を紹介してくれ」みたいなところとか。通常であれば編集でカットしてしまうような部分ですが、そういった場面をそのままに・・・。


“ブラ感”を出したいと思っているんです。人と突発的にふれあう部分や地元の人のキャラクターが出るところは残したいんです。「ここは余分だ」って切っていくと、全編説明の話になっちゃいます。情報と説明ばっかり……そこからフッと力を抜くことで見やすくなるんじゃないかなっていう狙いですね。


——それであえて残してるわけですか。 

そういうやりとりもタモリさんらしいなと思うんです。



——おれがいるのに誰も声をかけてくれないってぼやいたり(笑) 

そうそう(笑)。でも通常の日本のテレビ番組において、あれだけの長時間、タモリさんクラスの人が街で自らを人目に自分をさらして作っていることってないと思いますよ。それはやっぱり、町にいる人にとっても特別な瞬間なんですね。タモリさんが街を歩いていて、見かけた人が“エーッ”って思う感じが出せれば入れたいんですよね。一方で人が集まりすぎたら困るというジレンマはありますけどね。その間でうまく撮れたものがあるときは入れていこうと。



——『ブラタモリ』ですからね……このタイトルは最初から決めていたんですか? 

最初の仮タイトルは『タモリの時空ウォーカー』。歴史を追いかけて時空を超えた旅をするので。それで話は進んでいたんですけど、放送するときに「もう少し考えよう」ということになって。「旅」とか「散歩」という言葉を使ったアイデアを、結構スタッフ皆で出し合ったんですが、いろいろ考えているうちにある時に僕がふと「『ブラタモリ』にしようと思うんだけど」って名付けちゃった(笑)。我ながらオト的には結構いいと思うんですよ。いま『ブラタモリ』で検索すると何万件もヒットするんですけど、それ以前は存在していない言葉というところもよかったなと思います。タモリさんって昔ラジオで『ブリタモリ』という番組をされていたんですが、古いことを知っている人にとっては、懐かしい響きもあるかもしれないですね。




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番組data
番組名 ブラタモリ ジャンル バラエティ・音楽
放送局 NHK
放送日時 総合 毎週木曜日 22時00分から22時48分
番組URL http://www.nhk.or.jp/buratamori/
主なスタッフ チーフ・プロデューサー・尾関憲一、デスク・堀江誠己、ディレクター・高橋麻緒、竹下健一郎(敬称略) スタッフ数 約15人
主な出演者 ナレーター・戸田恵子(敬称略)
放送開始日 2008年12月14日 総合テレビ(新番組発掘プロジェクト“番組たまご”)
          第1シリーズ 2009年10月1日から2010年3月11日
          第2シリーズ 2010年10月7日から2011年3月

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