普段から目にしている何気ない小路に発見がある。

ブラタモリ

『ブラタモリ』とは…… NHK総合テレビの新番組発掘プロジェクト“番組たまご”から誕生。09年10月からシリーズ化。タモリがさまざまな“先生”とともに街をぶらつき、地形に残された過去の痕跡にちまちま突っ込んだり驚喜したり。アドリブ感覚満点ながら、ロケでタモリが接触した部分には適切な捕捉説明やCGを入れてくれる。無軌道な熟年の街散歩番組。第1シリーズは15回で終了。2010年10月7日より第2シリーズ放送開始

さて。では実際どのようにして番組は作られているのか。昨年オンエアされた第1シリーズでは、初回が秋だったにも関わらず、桜が満開だった。つまり収録は相当前だったということ。この尋常ではないタイムラグはなぜ発生するのか? タモリのスケジュール的な問題? いえいえ、これこそが、この番組の、この番組たるゆえんといってもいいのだ。  


——ネタになる街はどういった基準で決めているんですか?

最初はタモリさんに相談して決めようと思っていたんですが「決めてくれればそこにいくよ」って言ってくださったんで……。それでむしろモチベーションが高まりましたね。タモリさんに面白がってもらえること。とくに最初のシリーズのときには、全国的に知名度の高い街であることも意識しました。タモリさんは歴史だけでなく地形にも注目されるので……高低差とか斜面があるところを選んでいこうと。 


——タモリさんにプレゼンするみたいな意識ですね。

とくに初期はそうでした。タモリさんが現場に来て楽しそうにしてくれていると“やったあ!”って思うんですね。それがだんだん後半になって、タモリさんが「これは知らなかった!」っていうところや、普通ならば入れない場所、お馴染みの街でもいままで知られていなかったような新事実、みたいな要素をしっかり入れていこうと。 


——かなりタモリさんとの“たたかい”のようになってきた。


そうですね(笑)。 

——収録そのものって結構行き当たりばったりでしょうか? なんだかタモリさん、毎回異常な執念で街を見回っている気がするんですけど……。

【写真 IMG_0018/裏道をゆく撮影隊】 それはありますね。制作サイドとしての台本はがっちり作っているんですよ。調べたことを全て盛り込んで、見どころも決めて。でもタモリさんに台本は見せていません。「ここからここまでまずまず歩きましょう。そうすると、このヘンに何かありますんで感想を言ってください」「先生が先導してくれますので、ついていってください」っていう程度のお願いですね。それどころか「目に留まったところは行っちゃってください」って言っているので、元の台本からはかなり脇道にそれています。初期には、久保田アナだけはコースと内容を把握していたんですが、最近はそれもやめて撮り始めています。そこに何が待っているのかを知っているのはスタッフだけ。このあたりを巡るという大筋だけ決めて、どこに突っ込むかは決めないようにしています。  


——制作上、苦労する点は何でしょうか。

やっぱりネタ探しですね。ロケ以前の段階。大きなコンセプトがふたつありまして、まず「普段、目にしているものだけれど、気づいていないもの」「普段、見ることができないけれど、番組だから特別に入れるところ」ですね。このふたつを満たすネタを見つけることが大変なんですよ。でもまさに力の入れどころ。ここをきちんとしないと、新たに「街歩き番組」をやる意味がない感じがするんですよね。既成の街歩き番組との大きな差は、この二本柱を強く意識しているところ、だと思っています。 


——順序としては、こういうテーマにしましょうっていうことを決めてリサーチをかけて、構成を考えて……どういう流れになっているんでしょうか?

【写真 IMG_0021/撮影隊】 撮影に関してはタモリさんのロケが最初。その後に、そこでタモリさんが触れた事柄や、話したことを補足するために景色とか資料のアップを撮ります。そういうことってロケのときでも撮ろうと思えば撮れないことはないんでしょうけど、現場で撮るのはタモリさんのリアクション中心。その勢いとライブ感を撮っていくつもりですので、細かいところは最初から後回しになるんですよね。ただ撮影に至るまでに、そこで何を撮るべきかというリサーチに関しては、立ち上げから2カ月はかかっています。そのローテーションを考えると、ゼロから2カ月かけてリサーチをしてロケに至り、ポスプロに1カ月かけますから、1本あたり最低でも3ケ月はかかっているんですね。それを維持することで、クオリティを保っているところもあります。


——迎賓館にしても、ニコライ堂での鐘つきにしても、第2シリーズでの浜離宮にしても、そういうスペシャルな場所がなぜあのように協力的なんでしょう?

NHKだからということもひとつかもしれませんね。ありがたいことにやはり信頼感は持ってもらえているのだと思います。あとはやっぱりタモリさんが行くということ。そして「こういう番組でこういうコンセプトの元に紹介します」という、実績でしょうか。きちんと調べ真面目に伝えるべきは伝えるという、番組の姿勢をわかってもらえている気がします。もちろん『NHKスペシャル』であったならば、もっと真面目なんでしょうけど、『ブラタモリ』の場合は、バラエティ的な番組でありながらも、そこのきちんとした目線が先方に伝わっているんじゃないでしょうか。 


——それだけ丁寧に調べて作っている甲斐があるというものですね。 

ハイ(笑)。


——全編ロケになるわけですから、天候によって影響を受けることがあるのでは?


大きくはないですね。雨だからといって簡単にスケジュールを変更できるわけではないんですよね。頂いている日程の中で撮るしかない。でも、今まではホントにうまくいっています。だから僕らもそれを信じてやるだけなんです。今日もきっとうまくいくはずだ……って(笑)。


——で、そういうロケのために、この番組のために開発した新兵器などはありますか? 

一番普通に使っているのは“タモカメ”。簡単に言うと棒の先に小さいハイビジョンのカメラをつけたものなんですが、これがあることで、ちょっとしたところの俯瞰が撮れるんですよ。最近では他でも似たようなことをされ始めているので、“新兵器”ってことでもないですけれど、番組開始当初には新しかったですね。コンセプトもさることながら、世の中にはいろいろな“散歩番組”があるので、映像的にもNHKならではのクオリティを見せたいと。技術チームとも相談しながらやっています。タモカメも技術チームからの提案で生まれたものですね。あとはクルマにつけるカメラとかバルーンで上空から撮るとかいろいろアイデアは出てきています。


——垂直に動くカメラがありましたよね。 

“ポールカム”ですね。タモカメも、小さいクレーンにつけて使えるようにもなっているんですけど、そうやって仕掛けに凝れば凝るほど、現場で時間を止めることにもなるんですよね。ロケなので人も集まってくるし、撮影のテンポも落ちてくる。ここもジレンマなんですけれど、いまのところ機動力を重視してしまうんですよね。そういうなかで生き残ってきたのがタモカメでしょうか。



——ロケ周りはどのようなスタッフで制作していますか? 

【写真 IMG_0029/撮影隊】 タモカメと普通のカメラが出ているので……技術陣と制作含めると10人以上が周りに常についている感じですね。あとは撮影周辺にいらっしゃる皆さんの整理するスタッフが5人程付いていて、周辺の邪魔にならないよう工夫しています。



——スタッフの総勢は? 

いわゆるディレクターチームということでいえば、職員は僕とディレクター合わせて4人。そこにフリーのディレクターにもローテーションで加わってもらっているので、プラス4人ぐらい。ロケ現場にはADとスタッフが増えますから、ロケ用のスタッフは毎回10名ぐらい入っていますね。


——タモリさんは番組の中でも「良い坂の近くには江戸風情がある」って言っていますが、尾関さん自身、街中を回ってみて何か感じることってあります? 

僕も街を見ることはもともと好きだったんですが、タモリさんのいう「街の起伏を見る」というのは、この番組をやるようになってからですね。地形を大きく変えて宅地造成している場所もあるんですけど、大抵は街の起伏はいじらずに建物だけが変わってきている。だから地形に注目すると、土地としての位置づけがわかるよ……って、タモリさんがおっしゃるのがわかるようになってきました。高台のいい場所には昔、大名屋敷があり、そういうところには今も大きい面積を必要とするような建物が建っていることが多い。低くて細い道はもともとの川の名残り。タモリさんも言うんですが、いま目に見えている“土地”には縄文時代から人が住んでいるんですよね。変わらずに同じ土地に人が住み続けているという点では、古代ローマとかよりもよほど古い歴史があるかもしれない。そうした“土地に住んでいる”という意識は、番組の制作を通して持てるようになりましたね。建物はスゴイ勢いで変わるけれど、もともとの土地の起伏は残っていて、昔のちょっとした気配もある。それを拾い上げてあげると、見ている人が納得できると思うんです。「あーなるほど、そうやって見ると昔からある土地だってわかるよなー」って。その辺を伝えていきたいですね。



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番組data
番組名 ブラタモリ ジャンル バラエティ・音楽
放送局 NHK
放送日時 総合 毎週木曜日 22時00分から22時48分
番組URL http://www.nhk.or.jp/buratamori/
主なスタッフ チーフ・プロデューサー・尾関憲一、デスク・堀江誠己、ディレクター・高橋麻緒、竹下健一郎(敬称略) スタッフ数 約15人
主な出演者 ナレーター・戸田恵子(敬称略)
放送開始日 2008年12月14日 総合テレビ(新番組発掘プロジェクト“番組たまご”)
          第1シリーズ 2009年10月1日から2010年3月11日
          第2シリーズ 2010年10月7日から2011年3月

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