
社会情勢の不安定化、高齢化社会の到来による視聴者層の変化に加えて、視聴者のドキュメンタリー番組を見る目も肥えて来ているという。報道ドキュメンタリーのニーズが高まっていく可能性は今後も高い。そんな手応えを感じながら、原チーフプロデューサーが描いている将来の番組像とは?
——番組開始から1年たちました。見えてきたものは?
いやいや、まだ見えないですよ。まだ8ヶ月ですから。なかなか厳しいですよね。視聴率は上がってきましたが、二桁はなかなか遠い目標です。NHKを見ている層は視聴傾向が硬直化していて、なかなかザッピングしてくれません。NHKの視聴者を振り向かせるのは、本当に大変な作業だなと痛感しています。もう少し深い時間帯ならもっと楽なのにと。
——NHKをはじめ、他のニュース番組から差別化するとしたらやはり切り口ですか?
他のニュース番組と同じ内容を報じていたら、やっている意味がありません。たとえば秋葉原連続殺傷事件をこの番組で取り上げるのであれば、奇跡の生還を遂げたタクシー運転手がなぜ命を取り留めたのか被害者側の視点で振り返るとか、容疑者と同じ立場の派遣社員の悲哀を物語に落とし込むとか、独自の視点で伝えるべきでしょう。
——ドキュメンタリー番組を1時間にまとめるのは、大変ですよね。
10分間のVTRなら人物紹介で時間を持たせられますが、1時間番組だと表層的なVTRだけで引っぱりきれないところも正直あります。キャラクターが立った登場人物が主人公で、起承転結のある物語が浮かび上がってくるなど、ドキュメンタリーで1時間を持たせるのは並大抵のことではありません。
——ドキュメンタリーの客観性やフラットさと、ゴールデンタイムという時間帯に必要な番組の盛り上げを両立させるには、ジレンマがあるのでは?
視聴者の心が震えるような社会的メッセージが伝わるような番組をつくりたいんです。例えば、巨大な権力と闘っている人物の怒りや不条理感を伝えられる番組をつくろうと。そうい

う意味ではあまりフラットではないと思います。
——ネット世論などは意識しますか?
あまり意識しませんね。御殿場事件の放送後は、2チャンネルや長野さんのブログがものすごいお祭り状態になったみたいですけど。ネットとテレビの役割はちょっと質が違うと思うんですね。
——視聴者のドキュメンタリーの見方は変わってきましたか?
そうですね。例えば、ワイドショーの視聴者を例に取ると、私は90年代半ばと2007年から2008年にかけての2回「スーパーモーニング」を担当していました。15年前は、芸能スキャンダルの全盛期で、劣情を刺激するような企画が視聴率を取っていました。ところが、2007年に久々にもどってみると、政治や経済など社会的な問題をとりあげるほど数字が上がる様になっていた。時代は骨太なドキュメンタリー志向に変わりつつあります。
——きっかけはなんだったんでしょうか?
小泉劇場と、北朝鮮問題だと思いますよ。田中眞紀子や鈴木宗男らそうそうたる役者がでてきて、井戸端会議の話題に登場するようになった。政治がエンターテインメント化されたんです。北朝鮮問題も、最初は怖いもの見たさだったものが、だんだん情報が蓄積されて、視聴者も国際情勢や安全保障の問題に関心を持つようになっていった。そういう社会の流れを考えると、報道ドキュメンタリーのニーズはこれからも高まってくるんだろうなと思います。
——今後取り上げたいテーマはあればお話できる範囲で教えてください。
チャレンジしたいジャンルは、スポーツドキュメントと、もし政権交代など大政局になれば政治問題にもなんらかのかたちで対応したいと思います。