
2010年4月4日に放送100回を達成。記念したスペシャル番組は“ライブ”というやり方だった。視聴者を抽選で招いて、目の前で国分太一とケンタロウが料理を作る。そしてお客さんに振る舞う。まさにクッキング&トークライブ&ディナーショー。非常に素朴なアニバーサリーの祝し方である。しかし、ここにまさにこの番組の本質がきっちりと息づいていたのだ。
——100回記念が“ライブ”でしたね。
いわゆる生放送のライブではなく、公開収録という意味のライブ。太一くんはもちろんケンタロウさんもミュージシャンなのでそんな2人のノリがでたらということで「キッチンライブ」と表現しました。ホームページでの視聴者のみなさんからのリアクションを見るに、ユニーク方が多いイメージがありまして。2009年の4月に、1年分の放送をまとめた『男子ごはんの本』を出したんですが、ネットのブックレビューを見てみても、番組のファンで本を買ってくださった人、本から入って番組を見てくれてる人いろいろでした。番組としては30代中盤2人と同世代がコアターゲットなので、その辺のみんなで1回集まってみても面白いのかなと。太一くんもケンタロウさんも、われわれスタッフもずっと「どんな人たちが見てくれてるんだろうね」って言ってたこともあり、一度みなさんと会う機会を持ちたいなと思ったんです。
普通100回だと、まあゲストを入れたりするんでしょうけど。それを考えなかった訳ではないんですけど、“ライブ”をやるいい機会だなと思いましたね。
——特別なゲストを呼ぶより、普通の視聴者と会う機会を設 けたわけですね。
視聴率を考えたら違う考え方もあると思うんですけど。お客さんを入れてライブで料理をするスタイルを番組でやっ

てみたかったし、だったら15組30名の視聴者のみなさんが“ゲスト”っていう形でもいいかなと思ったんですね。というのも、普段から太一くんとケンタロウさん2人でやってる番組で、基本的にゲストは入れてませんし。僕らにとっての100回って、テレビ的に、たとえば“ハリウッドスターの○○さんが来てくれました〜っ”“祝100回記念!”みたいにやる方向じゃないんですよね、たぶん。
——そういう考え方はいつごろから持ってたんですか?
テレビの仕事をしていると視聴者の生のリアクションって見られませんよね。ライブなら、パッと見てわかる。さっきも言いましたが、本のレビューを始めいろんなサイトを見るにつれ、強くファンでいてくださる方がかなりいることがわかってきていました。何百万人という単位ではないでしょうが、度合の強いファンの方です。毎回番組を見ていて、本も欲しくて(あるいは手に入れて)、番組で見た料理を自分でも作ってみるという……いわば“男子ごはんファンクラブ”のみなさん。そんなクラブはないんですけど(笑)。彼らといつか何かをしたいという、漠然とした思いがあったんです。といっても大上段から“視聴者とのコミュニケーション!”を謳おうというのではありません。どんな人でも何かしらは食べないと生きていけないわけですから、料理って普通の営みですよね。だから、いろんな人がアイデア出し合いながら料理を作るのって成立するよなぁと。タレントじゃなくて農家の人がジャガイモ持ってきて「これでなんかうまい料理を作ろう」「ジャガイモってこういう食べ方がうまいんだよ」みたいな話してもいいなあって思ってたんです。まぁ今回は、こういう“ライブ”の形になりましたが。
——そもそも、視聴者とのつながりが強い番組にしたい、と思ってたんですか?
企画にあったのは“日曜の昼に見てもらいたい番組”。今の時代って、自分の好きな番組は録画してい

つでも見られますよね。でも自分の若いときには、この番組を見るからこの日なんだなぁっていう感覚がありました。1週間なんとなく楽しみにしていて、見ることが習慣になるような、そんな番組を作りたいなと思っていて。日曜日の朝11時すぎというと、遅めに起きて、ちょっとおなか空いたな、これからナニ食べようかなっていうような時間帯で。お昼すぎに出かける予定のときも、“コレ見てから出かけよう”みたいな番組。生活に近いところにあって、見た人のライフスタイルのちょっとしたピースになるといいかなと。それが、イコール視聴者とのつながりとまでは考えてませんでしたけど。
——で、料理を軸にトークがある番組が生まれたわけですね。でも従来の料理番組ともトーク番組とも違いますよね……。
料理かトークかっていうと、僕は実用的な料理番組であるべきだと思ったんです。きちんと伝えるべきところは伝える。どっちでもないっていうのは一番中途半端。だったら別にやる必要はない。料理を作る番組にしようっていうのは最初から決まっていました。ただ「大げさに伝える」「新しさ」「流行」「タレントのバリュー」……みたいなものを優位としてテレビ番組を作っていくことに対して、僕自身も「それだけなの?」っていう思いは持っていたんですね。日曜の昼間ということで、何か今までと違うモノ作りをするきっかけになるんじゃないかなと思っていて。“普通の料理番組と違う”っていうほど振りかぶってるつもりもなくて。たとえば焼きそばを作りつつ、もちろんカメラに向かってレクチャーはするんだけど、全然違う話もする。あたかも家で男2人が普通に料理をしているみたいな雰囲気で。
——非常にゆるい休日らしい佇まいですが、こういう感じで成立すると思ってましたか?
「ゆるい」というのは基本的にはいい言葉ではないですよね。まぁでも、ゆるいなりのきちんとした理由がある上でゆるくなってるものができると、それはそれでいいものだなと思います。僕たちは、どうしても何かを足していくという発想をします。1人でもタレントが多くいたほうがいい、1軒でも紹介される店が多い方がいいっていう。でもこの番組はそれをしていないわけですから、非常に不安はありましたよ。台本には料理の工程は書いてありますが、トークに関しては方向性だけ。ほとんど白紙です。基本的に太一くんとケンタロウさんにおまかせなんですよ。