スタッフや演出家との間をつなげるケータイ

独自の構成で人気を高めるなか、制作現場でプロデューサーが心がけている番組らしさの【放送コード】は、2002年に他界したテレビコラムニスト・ナンシー関の存在にあった。


―長年プロデューサーとして従事されてきたなかで、制作現場での変化は感じますか? 

もっと若いディレクターにがんばってほしいと思います。僕は、作家の沢木耕太郎さんが好きなんです。沢木さんは20代から有名無名問わずたくさんのひとを取材し、自分の解釈を世に問うてました。いまのテレビの若い人も、あの頃の沢木さんに負けてほしくない。もっともっと野次馬根性を出して、相手がいわゆる「大物」であろうとも体当たりして取材してほしい。過度にへりくだる必要はありません。心からのリスペクトを払いながら怖気づくことなく、オレに撮らせろという気概をもって挑んでほしい。もっとも、いま僕は41歳ですが、沢木さんが自分と同じ年齢の時に書いた本を読みなおすと、若い人のことを言ってる場合でもないんですけどね(笑)。


―若いスタッフに寄せる期待は、テレビ業界全体の期待でもあると。 

底上げをしていかないと、テレビはだんだんつまらなくなって、テレビ業界を目指す人もいなくなる。それが一番心配ですね。昔に比べてテレビの魅力が落ちてきたとよく言われますが、それは「ぜひ、あの番組を作ってみたい」と若い人をひきつけるものが減っているからかもしれません。僕が学生の頃でいえば、『俺たちひょうきん族』がそうでした。「オトナのくせにあんなに面白いことやりやがって。俺もいつかテレビのディレクターになってやる!」って思いましたもん(笑)。そんな番組をもっと作っていかないといけないなぁと思います。


―おもしろい番組を目指すなか、中野氏が参考にしているものは何でしょうか。 

日々こころの奥で意識していることといえば、ナンシー関さんに怒られないようにしたいってことでしょうか(笑)。もう亡くなられてしまいましたが、ナンシーさんがこの番組を観たらこう突っ込むだろうなぁとか、しょっちゅう考えます。ナンシーさんに恥ずかしくない番組を作りたい。「な~にやってんだか『情熱大陸』」といわれないようにと。もちろん、僕はナンシーさんとはなんの面識もないです(笑)。ナンシーさんを意識しながら制作しているスタッフは多いと思いますよ。亡くなられて本当に残念です。リトマス試験紙というか、ガイガーカウンターというか、テレビマンの僕にとって、ナンシーさんはある種の【放送コード】ですから。


―では最後に、『情熱大陸』はこれからどのような番組になっていきたいと考えていますか? 

特段こうしていきたいというビジョンはないんです。いままでどおり継続していけたらいいなぁと(笑)。ただ最近、勝ち組・負け組とかいいますよね。『情熱大陸』で紹介している日本を代表する人物というのは、いわゆる勝ち組の部類に入るとは思うんです。でも、競争に勝つ以外にも幸せになる方法はある。そんな価値観があったほうがいい。幸福の価値観みたいなものをあらためて考えなおすようなことができたらなぁと。でないと、『情熱大陸』はただ勝ち組を紹介する番組ということになってしまう。それはなんだかイヤなんです。


(小杉文彦=取材)

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番組data
番組名 情熱大陸 ジャンル その他
放送局 毎日放送(TBS系)
放送日時 毎週日曜日 23時から23時30分
番組URL http://mbs.jp/jounetsu/
主なスタッフ プロデューサー・中野伸二 ナレーター・窪田等 (敬称略) スタッフ数  
主な出演者 放送毎による
放送開始日 1998年4月5日

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