対談 情熱大陸 vs TVチャンピオン2

  1. 情熱大陸っていつの間にか観てしまう気がする。1%にこだわった小賢しいテクニックがないから(永井)
  2. 「ゆるキャラ王」はよくやった!頑張れば神様って下りてくるんだな(中野)
  3. テレビを作ることの魅力がなくなっているのか(永井) 頼まれて作るようなテレビはおかしいかも(中野)

話はお互いの番組だけでなく他局にも飛び火。フジテレビが頑張っていて、日テレはヒューマニティーらしいです。さらに数字至上主義の体質を紅蓮の炎で焼き、テレビ界の良心について熟考し、業界の今後を照らします。そして話題は尽きることなく……。 



―他局について、何か思うところはありますか? 

永井
 フジテレビは、なんだかよそとは違う気がしますね。 


中野 フジテレビさんの番組はみな細部までとっても考えられて作られているように思います。だからといって、プロフェッショナル集団というのとはちょっと違う感じがする。むしろ永遠のアマチュアリズムっていうのかなあ。すごく興味がありますね。百貨店業界のなかで伊勢丹だけ毛色が違うように、フジテレビは独自の存在ですよね。 


永井 放送局として、フジテレビにはブランドイメージがあるんですよ。番組単体で言うなら『鉄腕DASH』はいいブランドだと思いますよ。他だったら実現できないけど、あの枠の中だから許されることがいっぱいある。それは『鉄腕DASH』というブランドの信頼感あればこそ、ですよ。 


中野 それでいてしかもなんかやっぱり日テレっぽいんですよ。欽ちゃんもそうなんですけど。“人間ばんざい”みたいな感じが、日テレでは出るんですよね。 



―テレビ東京さんの番組は全体的に個性があっていいと思うんですが。 

永井 個性的であるとこを良しとして、視聴率を逃げている部分はあるんじゃないかなあ。個性的でありつつ視聴率があるのが一番いいんですけどね。 


中野 番組の良さと視聴率は必ずしも比例しませんからね~。それと、“予算があるからやってみろよ”と言われたときに、“ありがとう!”って言えるかどうかってあると思うんです。若いディレクターに“1億あるから作れよ”って言っても、予算の遣い方がわかんない気がする。 


永井 「1億あるから18%取れ」と言われることと、「1500万しかないから8%がいっぱいいっぱいだな」とでは、方法論が全然違うんですよね。普段「予算がないから数字とれない」みたいな理屈を言ってるからって「じゃあ予算やるから18%取れ」って話ではないんだよね」 


中野 「じゃあ予算3000万ぐらいでいいので、数字も12%ぐらいでいいですか」とか言っちゃうかも(笑)。予算と数字もまた別ですよね。 


永井 そりゃ大物のタレントさんが入ったらお金がかかって、その分で数%ぐらいは上げられることはあるかもしれないけど。 


中野 でもやっぱり『TVチャンピオン』はいいですよね。これだけ長くは続かないですよ。まず、なかなかこういう番組の企画書が通らないと思いますもん。 


永井 テレビ東京の枠だけでなく、世の中的にも一つはあってもいいテイストのものだからでしょうね。 


中野 「誰が一番かを決める」というのは、昔から普遍的にあるジャンルですよね。そういうベーシックな土台があって、でも、いわゆる感動モノが必ずおさえそうなポイントに“行きそうで行かない”。それが好きです。「いま頑張っている出場者の陰には、実はこんな家族の支えが――」みたいなところには、あんまり突っ込んでいかない。もう少し突っこめば、見ているひとの涙腺が絶対にゆるみそうのに……行かない(笑)。あ、もう終わりなのっていうあっさり具合がいいなぁと思います(笑)。“ゆるキャラ”のときも、役場のおじさんのドラマにもう少し踏み込めば泣くのに(笑)。でもそこで終わるから、あざとい感じがしないんですよね。 


永井 確かに、そこはあんまり固執しませんね……なんでだろう!? 


中野 そういう「モノ欲しげ」な感じのなさ具合がいいんですよ。いまのテレビのスタンダードでいうと、絶対に行っちゃいますから。 


永井 そんなふうに外部の人に言われると面白いですね。 


中野 だって構成作家とかが作った構成台本だったら、あそこに妻の涙みたいなのが入りますよ。 


永井 たぶん、そこへ行かない判断を瞬間的にしてるんでしょうね 


中野 結局、そのポイントだけを掘り続けていると絶対に埋蔵量が少なくなるんですよね。 


永井 そう。そのときは数字取れるんだろうけどけど、結局掘り尽くしてしまうことになる。続けることを目的化するのは嫌なんだけど……どこかで優先順位を意識してますね。これはもう、完全に番組のジャンルによりますよ。いわゆる旅番組だったら、基本的に同じところに球を投げる方がよかったりする。それもまた面白くないから、少しずつずらしてみたりもするんですけど、そうすると確実に数字が下がるんですよね。 



―『水戸黄門』みたいな安心感が必要なんですね。 

永井 そうでしょう。でも『TVチャンピオン』はまったく逆なんです。安パイだけで行けるほど甘くないんです。冒険して冒険してハズして、結局打率は3割〜4割にしかならないんだけど、それでちょうどいいぐらい。同じテイストをやり続けていくと……定番化というといいみたいだけど、すぐに飽きられちゃうんですよ。それを意識してるから、どんどん変なところ違うところに玉を投げてしまう。それで意外に場がもっているというか。M体質にならざるを得ないですよね。まあテレビマンとしては飽きない、終わりのない感じがしていいんですけどね。 


中野 映画の枠みたいな感覚ですよね。レギュラー番組なんだけど、毎週違う映画がオンエアされる……。 


永井 テレビ東京は他局と同じことをやらないテレビ東京に期待してる部分があるんですよ。昔ながらの先輩からは“こうやって作っていればいいんだよ”っていう手法を持ってるんだけど、若い人は今そんなの作りたくないって思っていて…… 


中野 どこかで“テレビ屋”の感覚が嫌われ始めているかもしれませんね。 


永井 ずれているのかもしれないですね。 



―ぜひ今度「ゆるキャラ選手権」を観てみます。 

永井 他のも一緒に合わせて観てください。あれはちょっと例外的なものなので、番組として起承転結があるかどうか……。 


中野 いや、あれは面白いですよ。ナンシー関さんが観てたらすごく喜んだはず。 


永井 『テレビコ』でもナンシー関さんの話されてましたよね。テレビの世界で、あの人の評を受け止めてる人って実はそんなにいなかったと思うんですよ。僕らはいつも気になってました……また、しょっちゅう書いていただいてたんです。完全に叱咤激励のつもりで読んでました。全然面識なかったんですけどね、ああいうテレビ界の良心みたいな方がいまいないのは、ねえ……。ちょっとぬるいと「おかしいぞ! それは」って言われました。 


中野 甘いことをやると、正確につついて来られてましたからね。こちらが、そこはちょっとやましいなぁと思いながらやっている部分を。誤解を承知でいうと、僕らの仕事は、別に使命感をもってやっているものではないんですよね。テレビコでも話しましたけど、やっぱり大事なのは“頼まれもしないことをやっていること”じゃないかな。 


永井 それは正しいですね。 


中野 頼まれて作ってるようなテレビはどこかおかしいと思う。役立たない情報をやることがいいとは一概にはいえないけど……でも『タモリ倶楽部』はいい例ですよね。何も役に立たないんだけどちゃんと面白い。ゆるキャラ王だってそうですよ(笑)。もうね、あんなことは普通の番組では絶対に起こらない。笑っちゃいますよ。最後にひっくりかえる。 


永井 僕らにとってはそこが一番楽しいですね。作り手が楽しそうに作っている様子って、観てても“楽しそうだな、いいなあ”ってわかるときがありますよね。それがプラスに働くことがあって。 


中野 作り手が、楽しそうに……草野球を楽しそうにやっているのを観ると、“なんかいいよなぁ~”って思えるのと同じ感覚ですかね。 


永井 いい意味で視聴者が共感してくれるとプラスに働くんですって。だから、数字がとれてても作ってる側が面白いと思ってないものはよくないですよ。 


中野 若い製作者たちが集まらなくなってきてるのが、この業界の問題だと、痛感しています。 


永井 テレビ番組を作ることの魅力がなくなっていってるんですよね。 


中野 そこにはやっぱり視聴率至上主義という問題があるんでしょうね。1000万人とか2000万人とかが観る番組をいつまで目指していけばいいのか、と。 


永井 年配者向けに番組を作らざるをえない状況なんですよね。19時台20時台さえも同じ。とくに若い世代にとっては、自分の親に向かって作るようなものです。だからプロフェッショナルとして相当割り切った仕事の仕方ができる人間じゃないと今は難しいのかもしれませんね。もともとはみんな、自分たちが面白いと思うものを作りたくて入ってきてるから。いきなり50代をターゲットにして番組を作れといわれても、無理でしょ。 


中野 そんななかでも『笑っていいとも!』って本当によく考えて作られてますよね。年齢層の高い人もきっちり押さえてる。一見するとペラッペラにみえるけど、作っている人はペラッペラでないし、中身もまったくペラッペラではない。ときどき、作り手のペラッペラさが見えて“どうするんだ!”って思う番組もありますから。『いいとも』はめちゃくちゃよくできてると思います。 


永井 毎日飽きないで、よく企画を思いつきますよね。フジテレビはえらい! 


中野 結局ゴールデンタイムの番組もあれの発展形なんですよね。ゲームとかって、たぶん企画書という書類のレベルだったら何が面白いか分かりにくいと思うんです。でも『いいとも』では、すぐに実際にやってみれる。で、面白いことが体感としてわかる。それをゴールデンでさらに発展させる。子どもたちがみんな食いつく。あれがフジテレビの強さだなあ。 



―やはり、作ってる側の楽しさが見えてますよね。めちゃイケなんかもそうですし。 

中野 今の若い人たちはめちゃイケみたいな番組を作りたいのかなあ。 



―はねとびとか。 

永井 そうでしょうね。あ、ところで……ここでは言えないんですけど…… 


中野 えーっ!? 


―それはすごいですね。でも聞いた話なんですが…… 

一同 (笑)


——未完——

 

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