対談 爆笑問題のニッポンの教養 vs 情熱大陸 前編

  1. 普通の人々を侮ってはならない。彼らは想像することができる。ドキュメンタリーの、いまのありかた。
  2. 観終わったとき何かが始まれば……。テレビがどこに向かっているのか。我々はどんなテレビを作るべきか。
  3. 観られ方をまず意識する前に自分にとって何が普通なのか。“作り手”にしばられないこと。

丸山 中野さんは、ドキュメント畑で、ずーっと入局の時から制作だったんですか? 


中野 そんなことないです。入社して最初の4年間は営業にいたんですよ。その後報道の社会部に配属されました。でも記者クラブ詰めのいわゆる番記者よりも、ニュース番組の中の企画ものの方を主に担当していました。で、98年に『情熱大陸』ができるときに制作に来て、最初はディレクターからです。 


丸山 入局するときに、“こんな番組をやりたい”みたいなことを言ったわけですか? 


中野 いやいや、就職活動中の学生さんなどによく聞かれるんですけど、そんなのあんまりなかったんです。ネクタイしめて満員電車に乗らなくてすむから、ととぼけた感じでして(笑)。 


丸山 ハハハ(笑)。 


丸山さんはマスコミ志望だったんですか? 
丸山 半分半分ですかね。私もネクタイの性質ではないので。半分は、大学院にでも残って、ちょっと違う角度から世の中を考えたいというのがありましたけれど、大学院で一人コツコツやっていられる性質でもないと思っていて。といっても民放でガツガツやるのもちょっと無理かなと。事実、テレビ局は民放は全滅でしたし(笑)。NHKの教養ディレクターだったら両方のいいとこどりができるんじゃないかと・・・。大学みたいな問題意識を持ちながら、何とか表現もできるのではないかと漠然と思っていたんです。そんなときに、NHK教育テレビやラジオ第2でゲリラ的なことをやっていている番組を見つけて。とくにラジオ第2には、それこそ個性的な教授のインタビュー番組、“現代文明展望”とか“現代を読む”みたいな内容で、非常にユニークな番組を作っていた人なんかがいたものですから。このラインだったら好きなことが出来るのかなと思って・・・、入局するときには本当にラジオ第2の番組を作りたいと言っていました。とにかく時代の風を受けて考えて表現する・・・、自分の好きなところでやっていたいなと・・・、その辺が原点でしたね。 


中野 (笑)。フジテレビの『おれたちひょうきん族』がいちばん好きだったんですけど、NHKの『YOU』は観てましたねえ。糸井重里さんは今でも、信頼していますし、尊敬していますし、僕が何かモノをつくるときに考えるマナーとかトーンとか、とっても影響を受けてます。 


丸山 確かに初期の『YOU』には、テレビの約束事をもう一回ずらそうという精神がありましたよね。糸井さんの進行の仕方とか、「テレビの作法」の解体に意識的でしたし“~と、台本ではこういうことになっていますが……“なんて。 『情熱大陸』が上手くいけばいったで、また新しいことを考えなくていけないでしょう。ああいうタッチのものを作ったら、今度はまったく正反対の作り込んだものを作りたいとかあるんですか? 


中野 やるんだったら、全然違うことをやりたいですねー。いまこそ<正々堂々とした番組>をもう一度やったらいいのになと思うんですよ。正々堂々というのは、番組オープニングで「はい皆さんこんばんはー。今夜もよろしくお願いします!」って始めて、エンディングは「はい皆さんごきげんよう、さようならー」で終わる番組。最近、よくあるじゃないですか、「この後××!」って言ったまま予告だけ出して終わるような。それはあまりにも誠実さに欠けるんじゃないかと思っていて。みんな正々堂々と番組を作った方が良くない? 数字をとることを考えるのに必死なのはわかるけど、総体としてテレビの品性が底辺で沈殿してしまうというか……。そういう番組を人間にたとえたら相当行儀が悪いですよ。そんな行儀の悪い人は嫌われます。挨拶もなしに始めるなよ! きちんと、ゲストも全員紹介して、最後はさようならでしょ!って思う。こういうの、よくないと思うんですよねー。 話は変わりますけど、『ニッポンの教養』というタイトルは、恥ずかしくないですか?(笑) 実は僕、『情熱大陸』というタイトルがちょっと照れくさい……。 


丸山 何か一周回って考える僕の妙な癖かもしれませんが、「あえて」って感じです。タイトルについては、“NHKですから・・・愚直ですみません”(笑)みたいなものがあったのかもしれません。『英語でしゃべらナイト』というベタなタイトルを付けた番組も制作しているんですけど、もう、みなさんに突っ込んでもらってなんぼじゃないかと(笑)。ベタで、駄洒落で作りました、と。“『ニッポンの教養』もニッポンが日本だったら、普通に20年前にNHKで作り出していたかもしれないですよ”とかいう一周を回って出しちゃってもいいかなと思っているんです。どうぞ突っ込んで下さいというか……。 


中野 では、まんまと罠にはまって……。 


丸山 いやいやいや(笑)

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