


お互いの番組をほめ合うのは決して社交辞令などではなく。ジャンルが違うだけに「いいなあ」と思いこそすれ「ヤラレタ!」とならないのが平和的なトーク&ディナーの秘密。ただ、“どれほどいいなあ”と思っているかに、言葉は尽きず。語気は高まる。
―『TVチャンピオン』には変わらぬ安心感、みたいなものがありますね。
永井 B級ならではのね。もちろん進化はさせてるつもりですよ(笑)。ただ“他の番組ではなかなかやらない変なことをやること”をテーマとして突き進んでいくことで、ブランドイメージを維持していけば、いいんだと思うんです。しかし特に最近は嫌われる要素をきちんと排除することが重要なんじゃないかなっていうこと。
中野 なるほど。
永井 かといって差し障りのない、ぽわーんとしたものを作ってもダメなんですよね。たとえば『カジキマグロ漁師王』なんですが、釣ったマグロを船に揚げるときにシメなくちゃならない。で、棒で叩くわけです。漁師の仕事として必要な過程なので、普通のドキュメンタリーならば当然映しますよね。そこで“叩く場面を嫌がる人がいるから減らすか”という議論が起こりうる。 『TVチャンピオン』には“荒っぽさ”というアイデンティティも、もともとあるので、結局は映しちゃうんですけど。その都度、どうなのかなって思いますね。『TVチャンピオン』のような番組でさえ、そういう点で苦労してるんですよ。ネガティブな要素を排除していかないと……」
中野 身もふたもない(笑)。 『情熱大陸』で以前、助産士さんをとりあげたことがありますが、そのときは、血まみれのヘソの緒や胎盤もそのまま放送しました。でないとだめでしょう? それが「気持ち悪い」と拒絶されることが怖いのなら、最初から助産士さんをテーマに取材しなければいいと思うんです。その拒否感を恐れて、生命誕生のコアともいえる部分をカットするなんて「根性なし」です。そもそも真摯に番組と向き合ってくれた取材対象や視聴者に失礼だし。“ヒューマンな物語で視聴者を感動させよう”っていう魂胆しかないっていうか。
永井 それぞれ担当のプロデューサーが勝手にいろいろ文化を持っていて、明文化できないからね。わからなかったら聞くしかないんだよね。
中野 明文化できないからこそ、本当に細かいチェック項目がありますね。
―そういう文化は、次のプロデューサーにバトンタッチするとき受け継がれるものですか?
永井 変わってしまうものでしょう。
中野 変わっていいんですよ。プロデューサーによっていろいろな考え方があるんだから。
永井 『TVチャンピオン』の僕の先代は7つくらい上なのかな。得意分野が違ったから。彼は、細かいネタを仕上げることにこだわりがあった。僕はどっちかというと“このネタを、このへんからこういう見せたらおもしろいんじゃないの”っていう、番組の構造を作るのが好き。ディテールは先代の方がうまかったと思う。やっぱりどうしても自分のスタイルが出ちゃうからね。
―『ゆるキャラ選手権』とか?
中野 アレは……よくやりましたよね(笑)! 基本的にくだらないんだけど、番組の最後が素晴らしい! “このエンディングのために、挑戦者がそこまで残ってきたのか!?”っていう、あの終わり方は誰にも思いつかないし、あんなストーリー、シナリオでは書けない。偶然の産物としか思えませんよ! 頑張ったひとのもとには神様って降りてきてくれてるんだなって感じ。あれを台本として最初から書ける人がいたら、相当の天才かもしれない。あの最後を見るための2時間だったんですよ。
永井 僕にもスジ書きは予想がつかなかった。あれは画ヅラ。何らかの能力や知識に秀でた人が競い合っているわけではないので、本来のTVチャンピオンの番組精神からはずれてる。まったくもって邪道なんですけど……何しろ画ヅラが面白くて。僕らは“変なことをやっています”という部分を大切にしているので、その証明みたいなもの。あと、これを見て面白いと思えるなら、その人にとってすごく面白いはずだと。そこに賭けてるんですよ。
中野 根っこの部分でバカにしていないんですよね。おこがましいかもしれないけど、それがあるから、見ていて気分が悪くならない。『アメ横選手権』とかも、くだらねーとは思うんだけど、大前提として出演者を“すごいな”と思ってところがあるんですよね。
永井 そこのところのバランスはすごく微妙なんですよ。面白さも大事なんですけど、それを追求するあまり、本当の職人さんの姿勢や技をないがしろにする可能性もある。職人さんたちにちゃんと敬意を表しながら、どこまでズラすことができるか。首を縦に振ってくれるかどうかは、お願いするまでわからないですね。
―ネタはどのくらい先まで決まってるんですか?
永井 5ヵ月ぐらいかなあ。ネタ出しは1週間に1回。情熱さんは?
中野 バラバラですよ。1年以上前から準備するものもあれば、ひと月のこともあります。うちは制作会社のオープンコンペ形式なんです。
永井 大変だなあ。それって怖いですよね。
中野 スタッフを抱えていないから、怖いといえば怖いですね。誰も僕に企画をもって来なくなったら番組が終わってしまいますから。それよりなにより“出てもいい”と、取材を受けてくれる人がいなくなったら終了。実はヒヤヒヤものなんですよ。
永井 テレビ東京では、いま、かなり現場の世代が若返ってるんですよ。
中野 ディレクターの平均年齢っていくつぐらいですか?
永井 32歳ぐらいかなあ。
中野 そんなに若いんですか?
永井 はい。
中野 どのくらいのスタッフで回してます?
永井 8班で2社体制ですね。
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