
まずは序盤。お互いにジャブの見せ合い。といっても決して戦うわけではなく。どうも中野・永井のご両名、番組作りの根本のスタンスはわりと近いものがあるようで。ディベートではなく、相手の論に乗っけて乗っけてお話は転がっていくのであった。
―『情熱大陸』はキャスティングによって数字は左右されますか?
中野 視聴率は平均すると8%らいですが、有名人をとりあげたからといって数字が跳ね上がるわけではないんです。一般の人とか、意表をつく登場人物が、視聴率をとる時もあるんです。たとえば、沖縄在住の方が出演した回。肩書きとしては“主婦”(笑)。ただ、電話もメールもなくて、連絡の手段は手紙しかないみたいな状況で暮らしてらっしゃっていて、これがとても良かったんです。 ドラマティックな展開は何もありません。ただ、暮らしぶりがすごくいい感じで……8月の沖縄のきれいな海ときれいな緑。農作業があり、掃除があり、洗濯があり、炊事があり、子育てがある。「ひとの営み」というようなものがちゃんとそこにある。この視聴率が11%。 こういうのに感じ入る人って思いのほかいるんだな〜と。ごくまれに、エイって感じで投げてみたものが (笑)すごく良かったりするんですよね。
永井 「情熱大陸」さんって、ラテ欄とかサイドスーパーに見どころの説明って入ってましたっけ?
中野 入れてないですね。
永井 いやあ、ホント何でしょうね。途中から見始めても面白いからなのか、ザッピングで視聴率が積み上がっていくのか、ラテの間口の問題なのか……わからないなあ。
傍から見たら「何やってんだよ(こうしたらもっととれるだろうに)」って思っちゃう番組もあるんですけど、『情熱大陸』さんに関しては、数字の読みが僕にはできないですね。
中野 最初から、これは視聴率とらないだろう、と覚悟して放送している場合もあるんですけどね。
永井 私の知り合いが、SHIHOさんの回を制作してたんですが、2ケタ取りましたよね。モデルで2ケタいくのはすごいなーって感じました。SHIHOに対する“ありがたみのある母数”って……つまり、どのくらいの女性視聴者がSHIHOを知っていて、彼女が出てくることをありがたいと思うとかって、あんまり読めないじゃないですか。
中野 なんとなくは想像つきますけど、やってみないとわかんないですね。
永井 ジャンルによりますか? ちょっと早い人とか、何かがすごく面白い人とかが、番組に合うんでしょうけど。でも、いわゆるアーティストとかデザイナーっていうジャンルはまったく読めませんよね。日曜日って、人を追いかけるドキュメンタリー番組が多いでしょ。テレビ東京にもあって、雑誌では相当に人気のある有名デザイナーが出てたりしたんですが、やっぱり番組と合っていないと、結果は出ないんですよね。長い間やってらっしゃると、何か読みどころが判るようになるんですか?
中野 アサヒビールさんとマツダさんに提供して頂いている点が大きいと思うんですよ。プロデューサーとしては少し気持ちがラクなんです。提供社さんの考えに余裕があるから長い目でみていただける。制作側の冒険心を見守ってくれる。そんなにめちゃくちゃなことさえしなければ「いい番組じゃないか」って。そう思ってもらえてれば、大丈夫かなぁと。
永井 アサヒビールさんだけじゃなく、みんないい番組だと思ってますよ!
中野 でも一方で、“いい番組”という優等生的なことだけをやっていて済むものではないと思うんです。優等生って、ともすれば面白みに欠けるでしょ。営業的にはやっぱり視聴率も求めます。その按配を考えます。当然ながらそちらにも目配りしておかないと、やはりトータルとしてはダメになりますよね。
―『情熱大陸』って、最初から意図的に見てる人が多いんですか?
中野 そうでもないですね。
永井 『情熱大陸』って、いつのまにか観てしまう気がするんですよ。1%にこだわった小賢しいテクニックがない感じがします。
中野 番組のフォーマットもないですし、せこせこ作ってはいないですね。1%にこだわって仕掛けを作ったところで、その後に生かせないんです。「ひっぱる」テクニックってのを知らないわけじゃないけれど、それは視聴者を「惹き付ける」というのとは似て非なるものだし。
永井 フォーマットがない分、編集のときの取捨選択の幅がすごいでしょ。といっても、細かいところことではなくて、大きく構えた取捨選択。しゃべりのテロップとかサイドスーパーとか、みんな怖くてやめられなくなってるところがあるじゃない。『情熱大陸』は、そういう小賢しいテクニックと無縁でいるという匂いがあって、それが日曜夜11時っていう放送時間にマッチしているんだと思う。テレビチャンピオンもなるべくしゃべりのテロップは控えるようにしてるんですね。サイドスーパーは必ず入れているけど。
中野 まあそこは段階を追うものですからね。
永井 結局、番組のブランドイメージが出来ているかどうかは大切ですね。
中野 でも、テレビ東京さんのドキュメンタリーの方が、間口が広くてキャパは大きいと思いますよ。買い物する場所でたとえると、豊洲の「ららぽーと」みたいな。『情熱大陸』は代官山あたりにあるセレクト・ショップのようでありたいな、と。ロット数があんまりなくて…… 。
永井 坪単価が高そうな感じね。
中野 『TVチャンピオン』さんは、ホームセンターかなあ。職人さんも相手にするプロユースでありながら、B級感もある。
永井 もともと『TVチャンピオン』って、ちょっと雑な感じに見えません? パッと見た画ヅラが。だいたい地味な工房とか体育館とか倉庫みたいなところでやってる……あくまでイメージなんですけど、画面がグレーとか茶色っぽかったりとかして。ロケもののときも、ちょっとチープな感じは否めないんですね(笑)。
中野 『TVチャンピオン2』になってから(佐藤)可士和さんのデザインが入って、かなりイケてる感じになってうらやましいです(笑)。
永井 いくらガサガサした番組でも、将来のことを考えるとね。昔は、ケーキに顔をつっこんでペロペロなめたりするようなシーンってよくありましたよね。よく批判もされた。僕自身は好きなんですけどね。テレビに対して世の中が、そういうのを求めていない傾向って、より顕著になってきた気がします。
中野 なるほど。僕は“ウルルン”(世界ウルルン滞在記“ルネサンス”)も担当しているんですが、視聴率だけでいうと、秘境の回はあまりとらなくなってきた感じがします。
永井 へ〜っ。
中野 家庭用テレビの画面が大きくなっていることも影響してると思うんですけど。大画面に映るものは、キレイなものであって欲しいんでしょうかねぇ。ウルルンといえば秘境というイメージまであったんですが、今や、スタッフの苦労が多いわりに視聴率だけを考えるとあまり報われない。
―情熱大陸の視聴者の年齢はどんな人達なんですか?
中野 30代から40歳代が中心です。ちょうどみんなテレビを視ている時間帯ですからね。
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